2018.04.05
Vol.108 どうする?未収金回収
一般の商売における売上金の回収を考えてみましょう。町のスーパーでは、商品をピックアップしレジで集計して代金を支払うという流れになっていると思います。スーパーでは商品の販売と代金決済が同時なので、未収金という概念は発生しません。次に、もっと大きな取引ではどうでしょうか? 住宅を新築する様なケースでは、建築請負契約→手付金の支払→着工→上棟式→中間金支払→引渡→代金決済 となり、サービスの提供と代金決済の間にタイムラグが生じます。
クリニックなどの医療機関でも、受付→診察→会計 という流れになっており、医療サービスを受けた後に支払が発生します。こうなると、お客さんに支払い能力がなければ「売上金の回収」が不能になってしまいます。建築の例の場合では、支払を三分割にすることで未収リスクを分散させています。最終決裁ができない場合は、建物の引渡をしないなどの保全措置もとれますが、医療機関の場合は、なかなか強硬手段に打って出ることもできません。
クリニックの場合は、基本的には性善説に立って対応するしかない様ですが、モデルケースを想定して、その対応を検証してみたいと思います。
受付「●●さん! 本日はエコーと心電図がありましたから、〇〇〇円です。」
患者「え? そんなにするんですか? 今日は持ち合わせがないので、どうしましょうか?」
受付「かしこまりました。次回の診察日にまとめてお支払い頂ければ結構ですよ。処方箋が出ていますので、お渡ししておきますね。」
クリニックの日常ではよく見る光景です。この時の受付対応としては、次回の診察日には回収できるだろうと性善説に立った対応をしています。ところが、この患者は、薬の処方までしてもらい、その後は症状も落ち着いたのか、クリニックに来院することはありません。エコーと心電図検査を行っているので、結構な金額にもなっているため、受付スタッフは様子を見るために、患者宅に電話をしてみることにしました。幸い、電話はつながり、その日のうちに支払を受けることができましたが、簡単に回収できないときもあります。
(まとめ)
事例の様に、手元に持ち合わせがない場合もあれば、生活保護の受給者証を忘れたと言って、窓口の支払いを拒絶する方もいらっしゃいます。一般の商売の概念でいくと、「診療拒否」という選択肢もあるでしょうが、クリニックの場合は、なかなかそうもできません。そんな時は回収不能になることも想定して、一回目の診察では、処置や処方も行わず、リスクを最小限にとどめておくことも必要です。医療証の確認ができて初めて本格的な治療に入るというスタンスを見せることが重要ではないでしょうか。健康保険証を忘れた場合の対応も同様に、原則通り、全額自費扱いとし、確認でき次第、清算するというクリニックのスタンスを明確にするようにしましょう。未収金は一旦、発生すると、その回収には多大な労力を必要としますので、性善説での対応を余儀なくされるクリニックとしては、「未収金」が発生しない、もしくは最小限にとどめられる方法を検討する様にした方がいいでしょう。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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