2018.06.05
クリニック奮闘記
Vol.151 投資計画の変更は借入条件にも影響する!? 調達不足をリースに頼らない
クリニックの開業を決意したときから、先生方の夢は大きく膨らんでいきます。勤務医時代にはできなかった医療の実現、組織の枠を離れ、「自分の城」の中では「自分がルール」となりますので、基本的には第三者から干渉を受けることがありません。豪奢な受付カウンターに、ホテルのロビーを彷彿とさせる待合室。再診の医療機器(しかも新品)に囲まれた診察室と処置室は、想像するだけでドキドキします。そして気が付けば、当初の予算を軽くオーバーしているなんてことは、よくある話です。ここで思い留まれば火傷せずにすむのですが・・・・・。本稿では、事業計画の安易な変更がもたらす様々なリスクについて解説していきます。
コンサル「内装工事費、医療機器等、運転資金を含めて総額8000万円の事業計画です。」
A先生 「損益分岐点としては、一日当りの患者数が40人だからイメージ通りだよ。」
コンサル「では、8000万円の予算の中で開業計画を立てていくことにしましょう!」
当初は、こんな感じでトントン拍子に話が進んでいき、いよいよ各業者から見積もりが届くところまできました。
A先生 「内装費用と医療機器で7000万円近くになるねぇ。これだと運転資金が乏しいから、医療機器のリース分を増やそう。」
コンサル「先生、ちょっと待って下さい。確かにリースを組めば資金調達は可能ですが、色々と弊害がでてきます。」
そう言ってコンサルタントはA先生にリスクの説明を始めました。
・事業融資の条件が変更される可能性がある
→リース契約は「借入」と同義と考えなければなりません。リース取引額が大きくなるということは、借入が増えるのと同じと考えなければなりません。これまでに、金融機関から具体的な貸付条件の提示が済んでしたとしても、本事例の様な場合、貸付条件を厳しくしてくる可能性があります。
(例)借入総額の減額、返済期間の短縮、金利の引き上げ等
・損益分岐点売上(必要な来院患者数)が高くなり、利益が出にくくなる
→事業計画はマーケティングに基づき作成されていきます。クリニックの開業予定地における潜在患者と来院予測に基づいた計画になっていなければなりません。損益分岐点が上がることで、事業計画そのものが破綻していませんか?またマーケットに合わせた事業計画になっていますか?
当り前のことですが、夢ばかり見ていては現実を乗り越えていくことはできません。開業が目的ではなく、事業の成功(クリニックの繁栄)が目的であるということをわすれてはいけないのです。
(まとめ)
コンサルタントの諫めもあり、冷静に戻ったA先生は、当初の投資計画を適正規模に縮小することにしました。事業の立ち上がり具合を見ながら、段階的に医療機器等の設備投資を行うことでリスクを吸収しようと考えたのです。
「やってみなければわからないじゃないか!」と言われるかもしれませんが、失敗した後では遅いのです。実務の中では、現実的なもの以外は全てリスクと認識し、事業計画を立てていくことで最悪の事態を避けることが重要なのです。
※損益分岐点(Break Even Point)医業収入と経費が釣り合うポイントのこと。ここでは一日40人の来院患者があればプラスマイナス0(収支トントン)であることを表現しています。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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