Vol.152 基金拠出型医療法人の事業承継と相続対策

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2018.06.06

Vol.152 基金拠出型医療法人の事業承継と相続対策

第五次医療法改正において医療法人制度の見直しがなされ、『基金拠出型医療法人』が創設されました。従来型の『持分の定めのある医療法人』では解散時に出資持分に応じた残余財産の分配が可能でしたが、拠出型医療法人では、解散時の残余財産の帰属先を制限し、非営利性を徹底することを目的に法制化されました。そのため、従来型の医療法人とは違う形の事業承継対策、相続対策が必要となりました。本稿では、『拠出型医療法人』における対策について言及していきたいと思います。

 

A先生「ウチのクリニックは拠出型医療法人だけど、解散時には残余財産が国に没収されっるて本当なの?」

税理士「法律的な考え方としては、後継者不在の場合、残余財産は国地方公共団体に帰属するということになりますが、実務的には残余財産は退職金として理事長ファミリーが受け取ることになりますので、従来型の医療法人と運用が変わりません。ではA院長の場合について解説していきましょう。」

 

基金1000万円で医療法人を設立した場合、内部留保があるとしても払い戻されるのは1000

万円のみで、不動産を借りると時の保証金みたいなものと考えて下さい。事業承継において

後継者が存在する場合から考えていきましょう。出資金の概念がないため経営権の移行の

み、理事長の変更登記で完了することになります。(医療法人内での課税関係は生じない)

一方、後継者が存在しない場合は、解散もしくは第三者への営業譲渡を見据えた対策が必要

になります。スキームとしては在職中に役員報酬として適正額を受け取りながら、退職時に

は役員退職金をできる限り多く取れる様に準備することです。スタッフについても退職金

の準備が必要になることがありますので、必要な場合は別途準備する様にしましょう。

役員退職金の準備には、一般的に生命保険を活用します。生存中に受け取る場合の役員退職

金(慰労金)や、死亡時には死亡退職金や遺族に対しては弔慰金という名目で支給する事が

できます。

・役員退職金(慰労金)として受け取る場合

医療法人で契約している生命保険を個人契約に契約者変更することにより、役員退職金を

「みなし退職金」として保険契約で受け取り、その後の相続対策に活用できます(所得税法

基本通達36-37)。但し、「みなし退職金」に対する所得税及び住民税の納税は発生しま

すので、手元に納税資金が確保されていることが前提です。

・死亡保険金や弔慰金として遺族に支払う場合

弔慰金は非課税(相続税法基本通達3-20:業務上の死亡の場合 → 死亡時の最終月額

報酬36ケ月分、業務外の死亡の場合 → 死亡時の最終月額報酬6ケ月分)

相続税の非課税枠 → 死亡退職金は500万円×法定相続人数(相続税法第12条)の為、

遺族は税法上の優遇を受けながら相続納税資金や遺族分割資金などに利用することができ

ます。

 

役員退職金規定において死亡退職金受取順位を設定し、死亡退職金支払第一順位を後継者

にしておくことで、後継者の相続税納税資金を確保しておくことも有効です。

 

(参考)医療法人における役員退職慰労金・弔慰金規定(サンプル)

〇〇条(弔慰金)

任期中に役員が死亡したときは、死亡退職金とは別に弔慰金として支給する。

・業務上の死亡の場合・・・報酬月額×3年分

・業務外の死亡の場合・・・報酬月額×6か月分

〇〇条(支給時期)

退職慰労金・弔慰金の支給時期は原則として、社員総会の決議または承認後〇ケ月以内とす

る。

〇〇条(死亡役員に対する死亡退職金等)

  1. 死亡した役員に対する死亡退職金・弔慰金は、役員が指定した遺族に支給する。

  2. 遺族が指定されていないときは、配偶者を第一順位とし、配偶者がいない場合には、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順位とする。なお、該当者が複数いるときは代表者に対して支給するものとする。

〇〇条(使用人兼務役員の取り扱い)

この規定により支給する退職慰労金の中には、使用人兼務役員に対し使用人として支給す

べき退職給与金を含まない。

 

 メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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