Vol.140 赤字訪問看護ステーションの挑戦

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2018.05.21

Vol.140 赤字訪問看護ステーションの挑戦

在宅医療看護に対するニーズは、今後もますます増えてくると思われます。既に地域の中には大小の規模のステーションがひしめき合っていますが、経営的な基盤は脆弱で資金力の乏しい事業所が殆どであると言っていいでしょう。医師会や地域の基幹病院が経営するステーションでは資金的、マンパワー的にも安定してはいますが、事業所単体では赤字であり、法人本体からの支援で成り立っていると思われます。そんな中、小規模事業所であっても継続的に利益を出し、事業所運営をしているステーションもあります。本稿では、健全経営の為の訪問看護ステーションの経営管理について言及していきたいと思います。

 

ある医療法人のグループ内にある訪問看護ステーションAは、常勤ナース3名、非常勤ナース3名で運営されています。本体の病院からの紹介患者(利用者)をフォローすることをメイン業務にしてきました。病院から指示のあった患者(利用者)は一定数ありますが、外部からの依頼は殆どなく、赤字体質から脱却できないでいます。

 

所長ナース「グループの患者(利用者)をフォローするのは当り前だけど、外部の医療機関からのオーダーも積極的に受けていこうと思うのだけど・・・。」

看護師B 「赤字かもしれないけど、結構忙しくしてますよ。先日も市民病院から依頼があったけど、時間も掛かるし、ややこしそうだったから断りましたよ。」

所長ナース「全体の訪問回数は、私の方でコントロールする様にするから、これからは全ての依頼を断らずに受ける様にしていきましょう!」

 

こんな感じで依頼を断るステーションは少なくありません。事例にある市民病院のMSWは、恐らくあちこちのステーションに断り続けられていると思います。そんな中で受けてもらえるステーションがあれば、どう思うでしょうか?営業の世界でもよくありますが、困っているときに助けてもらった人のことは絶対に忘れません。こういうときこそ絶好の営業チャンスだったはずです。今回は難しい患者だったかもしれまえせんが、継続取引の中ではいろんな患者(利用者)を紹介してもらえるはずです。看護師Bが言う様に、グループ内で患者(利用者)のやり取りがあるので、それなりに忙しいとは思います。しかし本人が忙しいと思っていても赤字の中での忙しさなのです。独立した事業体であれば、とっくに「倒産」

しています。

 (まとめ)

危機感を感じた所長ナースは重い腰を上げ、各病院の地域連携室やケアマネージャー等へあいさつ回りを始めました。毎週金曜日は終日営業日として、朝から夕方まで各事業所を訪問していきます。また月1回のペースで、地域の訪看ナースを集めての勉強会を主催。目的はステーション同士の情報交換と訪問看護師のリクルートです。自ら動くことで、各事業所の担当者の見る目も変わり、患者(利用者)の依頼も増えただけでなく、ステーションの認知度のアップと地位向上にもつながりました。患者(利用者)が増えたことで、内部の管理体制をしっかりしなければならなくなりました。患者(利用者)の効率的な訪問のために、訪問看護師のレベルにあった訪問先に変更していきます。キャリアの浅いスタッフは介護保健で状態の安定した患者(利用者)を優先的に担当し、ベテランスタッフはターミナルや小児患者を中心に担当していきます。一人当たりの訪問件数の目標を週単位、月単位で設定することで、行動管理のPDCAを徹底的に行います。所長ナースが行ったのは、「数値による行動管理」です。これまで赤字が当たり前だったスタッフも、個人がなすべき課題と行動計画が明確になったことで意識が一変しました。今では、黒字化に向けてチームは一つにまとまっています。

 

 メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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