2018.04.13
Vol.114 開業医は儲けすぎ?② ~所得に対する勤務医と開業医の考え方~
前回は、開業医の所得のお話しをする上での前提として、診療科目別による所得率の違いについて解説させて頂きました。診療単価の高低ではなく、設備投資額とランニングコストの概念を入れることで、利益率として捉えなければ正確な比較ができないというものです。
その結果、診療科目によって収益力の高低が把握することができたと思います。クリニックの院長の所得は、経営努力によって変動することはありますが、年功賃金により給与所得を得ている勤務医よりも高くなっています。では開業医の所得は本当に高いのか?という問題について、本質部分に迫ってみたいと思います。
クリニックを開業している医師と、病院から給与所得を得ている医師との違いを考えてみましょう。個別の内容については以下で解説しますが、概念的には経営リスクの対価が高所得につながっていると言えます。
・社会保険(健康保険、年金保険)の加入
勤務医の場合、社会保険料について病院が1/2を負担している
開業医の場合、事業利益の中から捻出する(医療法人の場合は経費処理される)
・退職金の準備
勤務医の場合、病院の負担で退職金を積立
開業医の場合、小規模企業共済(個人診療所)、生命保険等で積立(医療法人)
・有給休暇
勤務医の場合、就業規則により法定の有給休暇の取得が認められている
開業医の場合、有給休暇はない。休診であれば医業収入はゼロ
・借入金の返済
開業医の場合、クリニックの設備投資のための借入金の返済があり、個人診療所であれば可処分所得か
ら返済、医療法人であれば税引き後利益から返済
・傷病等により就業不能になった場合の補償
勤務医の場合、社会保険から傷病手当等の補償がある。公務であれば就業規則により勤務先からの補償
も得られる
(まとめ)
勤務医の場合、労働基準法などの諸法律により、働く環境と様々な権利で守られています。社会保険料や退職金についても、『福利厚生』として勤務先病院が一部負担しています。ところが、開業医の場合は、これらの保障は全て自己金融(自らの資金で補てん)で賄わなければなりません。つまり、社会保険料、退職金の積立、老後の年金、そして設備投資の際の借入金の返済の全てを事業利益の中から捻出していく必要があるのです。そう考えると、勤務医よりも所得が高くないと、生涯所得の確保ができなくなってしまいます。
結論として、社会的には開業医の所得の高さが目に付くかもしれませんが、全てを自分で手当しなければならないことや、就業不能時の補償などのリスクを考えると、必要な所得といえるのではないでしょうか。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
◆クリニック経営 関連のバックナンバー◆
Vol.3ウチのクリニックの経営は大丈夫(3ケ月遅れの試算表では遅すぎる意思決定)
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report15.html
Vol.13事業計画って絵餅じゃないの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report47.html
Vol.14医療機器の導入はリースがいいの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report48.html
Vol.16クリニックで黒字倒産の危機
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report50.html
Vol.17経営理念は必要か?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report51.html
Vol.18どうする差別化戦略?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report52.html
Vol.19分院経営は難しい
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report55.html
Vol.20頑張れ!って言うけど、何をどう頑張るの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report56.html
Vol.22施設との関わり方
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report60.html
Vol.26物品管理と棚卸
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report68.html
Vl.28インフルエンザの予約方法
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report75.html
Vol.37院長はプレイングマネージャー なんでもしなけりゃ
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report94.html
Vol.38節税目的で購入した器機の末路
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report96.html
Vol.51患者が来ないから、アルバイトに行こう
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report128.html
Vol.55クリニックの社会的信用は何ではかる?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report137.html
Vol.58毎日がマンネリ。開業医の日常に辟易
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report140.html
Vol.60住宅ローンがあると開業できない?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report155.html
Vol.61査定を受けたレセプトの対処
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report156.html
Vol.63家族は他のクリニックの患者
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report158.html
Vol.64繰り上げ返済してもいいですか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report160.html
Vol.66まとめ買いは本当に得しているのか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report203.html
Vol.68お金が貯まるシステムの作り方
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report205.html
Vol.69在宅診療のススメ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report206.html
Vol.70医療法人化を考えるとき
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report208.html
Vol.72院長へ報告するということ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report210.html
Vol.74看板方式で在庫管理
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report212.html
Vol.75「言いましたよ」は伝わっていないかも?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report219.html
Vol.76業務の効率化はしたけれど
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report220.html
Vl.94自由診療の値決め
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report258.html
Vol.101 久しぶりの来院「変わりありませんか?」
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report277.html
Vol.105 代診ドクターの診療日
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report286.html
Vol.107 仕組みで運営するクリニック
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report288.html
Vol.108 どうする?未収金回収
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report289.html
Vol.110 事務部門のアウトソーシング
Vol.113 開業医は儲けすぎ?① ~診療科目別利益率~
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本格的なコンサルティングの前に、専門家によるノウハウをWEB上で体験して頂けます。無料版ではありますが、先生方の経営の意思決定に役立つ内容をご提供したいと考えています。個別相談にも対応していますので、登録のご検討を宜しくお願い致します。
【無料コンサルティングレポート】登録はこちらから
→ https://medical-takt.com/mail.html
【個別の経営相談に関する問い合わせ】
→ info@medical-takt.com
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本稿のバックナンバーは、メルマガ運営サイト「まぐまぐ」にも【トラブル発生!!クリニック事件簿】として掲載しています。
(運営会社)株式会社レゾリューション