2018.05.22
クリニック奮闘記
Vol.141 処方日数の分散と患者管理(待ち時間の解消)
クリニックの待ち時間対策は永遠のテーマあり、これまでにも様々な工夫がなされてきています。予約システムや受付票の発行により、待合室での滞留時間を短縮する方法や、待ち時間そのものは短縮に限界もあるため、快適に過ごすためにアメニティの工夫に力を入れているクリニックなど。100%満足のいく結果ではないにしても、一定の評価は得られていると思われます。本稿では、薬の処方の間隔を患者によって変えることで、来院日をコントロールしようと試みたクリニックのお話しです。
Aクリニックの待合室は今日も患者で一杯です。院長の診察を受けるための待ち時間は、最低でも1時間待ち。これまでにも待ち時間の解消のために様々な取り組みを行ってきました。まず取り組んだのは、「混雑している時間」と「空いている時間」を院内で掲示し、患者を分散させることが狙いです。また来院した患者に待ち時間が分かる様に、受付カウンター前に目安となる待ち時間をパネルで掲示することもしてみました。若干の効果が認められたものの、ドラスティックな改善とは言えません。わざわざクリニックに足を運んだ高齢者は一旦帰宅することはないからです。そして遅ればせながら予約システムの導入です。基本的には順番取りのシステムとして運用します。システムの利用ができない高齢者は電話で受付、もしくは診察終了時に、次回来院日を時間予約して帰ることにしています。システムの運用には受付スタッフの苦労もありましたが、かなりの効果は上がった様です。
A院長の改革は更に続きます。薬の処方間隔を患者によって分散させることで、来院そのものをコントロールしてみました。風邪症状ほかの急性期疾患の患者は3日から長くても1週間までの処方ですが、高血圧症などの生活習慣病や甲状腺疾患で症状の安定している患者については、30日から最長90日まで長期処方に切り替えていきます。殆どの患者が、この属性であるため、長期処方への積極的な切り替えによりクリニックの減収が予想されましたが、待ち時間の解消に伴って新患も増えたためインパクトは限定的でした。半年経過後、来院患者数と医業収入を対策前と比較したところ、減収することなく同水準をキープできていました。
(まとめ)
待ち時間解消策のひとつとして処方間隔のコントロールをご紹介しました。ドクター自らで患者を分散させるので効果は期待できますが、減収というリスクも飲み込まなくてはなりません。本稿では一般的な手法をご紹介しましたが色んな手法を試してみて下さい。待ち時間が発生する原因は一つではありません。
注)新薬や向精神薬については14日限度の処方となります。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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