2018.12.10
クリニック奮闘記
Vol.272 理想的な患者の引継ぎ方
事業継承(M&A)の一番のメリットは、患者と収益基盤を引き継げることにあります。100%の患者を継承することは難しいですが、前経営者の協力のもとできる限りの対策を講じていきます。一般的には30%減程度のドロップアウトが見込まれると言われていますが、本当にそうなのでしょうか?本稿では事業承継において、患者の引継ぎの場面にフォーカスしていきたいと思います。
A院長は外部業者を通じて、継承希望のB先生とクリニックの継承(M&A)について交渉中です。もともとの持病もあり、体力的に自信が持てなくなってきたことが継承(M&A)の理由です。開業して25年の間、真面目に地域医療に取り組んできたこともあり、未だに一日の来院患者が50人を切ることはありません。近隣にはA院長より若いドクターが経営するクリニックがない訳ではないのですが、A院長の優しい人柄が患者に安心感を与えているのでしょう。
A院長
「レセプトをご覧ください。この様に患者は1日50人超で、医業収入も月間500万円を超えています。」
B先生
「すばらしいですね。A先生の患者を一人でも多く継承できる様に頑張りますので協力をお願い致します。」
こうしてB先生は、A院長の協力のもと、週2コマの外来を担当することにしました。A院長は加療中の患者に、B先生にクリニックを継承することを伝え、引き続き来院して頂ける様にお願いしています。時にはB先生の診察時に、2人で患者の診察を行うこともありました。
B先生
「A院長、有難うございます。直接、患者の反応を見ながら引継ぎができたのは有難いことです。幸い、殆どの患者が残ってくれそうなので私も安心しています。」
A院長
「B先生、まだあとひと月ありますよ。一通りの患者を引き継ぐまでは私もユックリできません。もう少し頑張りましょう。」
(まとめ)
患者の来院動機には大きく2種類あります。院長が好きで来院される場合と、便利な場所にあるという場合です。事業承継(M&A)時にドロップアウトしていくのは、前者の属性の患者です。場所に利便性を感じて来院する患者は、どんな院長が診察していてるかは気にしていないため、離れることはありません。AクリニックはA院長の人間性(パーソナリティ)に寄ってきた患者が多くいます。そのことを理解していたA院長は、患者の引継ぎには時間をかけてでも、一人一人に声を掛けたいと考えていました。その甲斐あって、B先生が引き継いだ後も患者がドロップアウトすることはありませんでした。モノを販売する物販店舗を引き継ぐのと違い、クリニックはサービス(技術)を提供しています。クリニックという箱は簡単に引き継げますが、サービスの本質は引継ぎが難しいのです。前院長(経営者)の培ってきた患者サービスというものを、十分に理解した上で医院継承(M&A)をしていきましょう。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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