2018.09.19
クリニック奮闘記
Vol.222 伝え方の難しさ(聞き手に合わせた話し方)
最近、自分の思っていることを人に伝える難しさを痛感した事例があります。自分としては"伝わっている"と思っていたことが、意図した内容で伝わっていないことが往々にしてあります。誤解が生じていることが判明した場合は直ぐに修正することができますが、誤解が生じていることすら認識されないこともあるのではないでしょうか。本稿では、私がある介護施設で経験したお話しをさせて頂きたいと思います。
クリニックに併設されたデイケアでのお話しです。クリニックと事業所は駅前のビルにテナントとして入居しています。そのビルは築後40年で老朽化も進んでおり、最近では電気系統の故障、特にエレベーターのトラブルが多くなっています。デイケアはこのビルの2階にあるのですが、エレベーターが故障するたびに、利用者は施設内に缶詰になってしまいます。また、エントランスホールはバリアフリーでないこともあり、常に転倒のリスクを抱えています。あるスタッフが、管理者である院長にこんなことを言っています。
介護スタッフ
「ビルも古くなって、エレベーターもよく故障するので、利用者にも迷惑を掛けてしまって
います。何とかならないものでしょうか?このままだと、不安で仕方がありません。」
現実的な問題として、ビルの老朽化対策には限界があります。エレベーターの取り換えはオーナーの問題であるし、コストから考えると対応は難しいと考えられます。このビルで営業を行うことに不安を感じるなら、いっそのことデイケアをやめてしまおうかとも考えています。ある日、院長はデイケアの責任者と、今後のことについて話してみることにしました。
院長
「ビルの老朽化について、ここでの対策は限界がある。このままの状態で頑張って営業していくか、ここを出て1階のテナントを借りるか考えているんだけど、どう思う?そうなると、売上を上げることを考えていかなければいけないんだけどね。」
デイケア責任者
「スタッフの中には収入基準(103万円)がある人もいますし、これ以上、勤務時間を増やすのは無理です。今のスタッフで、これ以上の売上を上げていくのは難しいです。」
(まとめ)
院長は、ビルの老朽化に対するスタッフの意見を知りたかっただけなのです。"現状でいい"ということであれば、それも一つの選択ですが、老朽化を問題視しているスタッフが多数を占めて、且つ、改善を求められるのであれば、次のステップとして移転する選択肢もあるということなのです。ところが、デイの責任者は、"移転するなら売上が必要"という内容の言葉に拒否反応を示し、院長の論点とずれてしまっています。今回は、二人の会話の中で誤解を解きながら軌道修正ができましたので、幸いにして、他のスタッフに要らぬ誤解を招くことはありませんでした。コミュニケーションの難しさは、聞き手の理解力、心理状況によって齟齬を招く可能性を秘めているところにあります。大事なことは、聞き方を変え、表現を変えるなどして相手の理解度を探ることも必要です。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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