2018.09.20
クリニック奮闘記
Vol.223 回転寿司より安いクリニックの時給
飲食業における求人難はどこも深刻で、慢性的な人手不足に疲弊している店舗も出てきています。ある外食産業の深夜勤務で、全ての業務を一人で行わなければならない「ワンオペ」も問題になっていました。流石にこれは社会問題にもなりましたので、会社としては拙速な対応を求められ沈静化はしている様です。しかしながら根本的な解決がなされた訳ではなく、日本全体で見た場合、今後の労働力不足は不可避であり、労働集約型の事業所では、その対応に迫られています。本稿では、クリニックで働くスタッフの時給が飲食業よりも安いという現実について考えてみたいと思います。
ある求人雑誌によると、回転寿司店の平均時給は次の通りです。
大阪府980円、兵庫県935円、京都府957円。
これに比べてクリニックの事務系の平均時給は、大阪府968円、兵庫県914円。
比較してみると、回転寿司の時給よりも医療事務の時給が安いことが一目瞭然です。医療事務の資格を持っている人からすると、苦労して資格取得したのに報われない気持ちになってしまいますね。飲食業とクリニックとでは店舗数が違いますので、平均値を同じ土俵の上で比較するのは乱暴かもしれませんが、労働市場における需給のバランスはイメージできると思います。前述にある様に、飲食業界での人手不足の究極の対応策が「ワンオペ」だったのです。社会問題になって現場の事情が明るみになってからは、正社員の処遇改善やパートスタッフの時給アップにより、人材の確保に努めてきました。その結果として現在の平均時給に至っています。クリニックの場合は、一定の資格や少しの特殊技能が必要されます。時給の多寡よりも、スキルを活かした仕事を求める人が応募してくるため、市場における需給バランスからは若干のギャップを生じているものと考えられます。
求人広告を出す場合、近隣の医療機関の給与相場と比較することが多いのですが、今後は地域の中で他の業種と比べてみることも必要になってきます。給料は経営者のメッセージと言われています。一時的には高い給料を支給することで人は集まりますが、それと医療の安全と質は一致しません。スタッフの採用にあたっては、クリニックの人材像を明確にすることが望ましいと私は考えています。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
◆労務管理 関連のバックナンバー◆
Vol.6前職の病院からスタッフを引き抜き
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report40.html
Vol.8信頼しているスタッフが引っ越し、でも継続勤務してもらえることに
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report42.html
Vol.29スタッフの離職がとまらない!
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report76.html
Vol.57看護師の採用は難しい
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report139.html
Vol.59退職は連鎖する
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report141.html
Vol.62求人広告のツボ!ワークライフバランスを考える
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report157.html
Vol.71採用難への対応
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report209.html
Vol.89余裕はないけど採用しておいた方がいい?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report246.html
Vol.92 スタッフ採用における選考基準
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report256.html
Vol.97 電子カルテじゃなく、患者に目配りしよう
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report266.html
Vol.103 中途採用者の人事評価
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report281.html
Vol.116 スタッフの退職金を考えよう
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report310.html
Vol.120 スタッフの集団退職!?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report320.html
Vol.122 有給休暇はいつでも取れるのか!?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report322.html
Vol.124 男性スタッフを採用する覚悟
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report324.html
Vol.130 仕事のできるスタッフ不要論
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report342.html
Vol.142 人事評価は「エコひいき」
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report366.html
Vol.145 就業規則と解雇
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report376.html
Vol.150 「掛け持ち勤務」のスタッフの言い分
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report387.html
Vol.153 キャリアアップ助成金の活用
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report396.html
Vol.155 求人市場『今昔物語』
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report399.html
Vol.159 対応を丸投げするスタッフ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report404.html
Vol.171 3万円のパート代の意味
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report435.html
Vol.181 院長が休むのは悪いことなのか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report458.html
Vol.183 学校行事とスタッフの勤務
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report460.html
Vol.190 問題スタッフの退職後の動向
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report481.html
Vol.193 家庭の事情?スタッフ採用の落とし穴
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report486.html
Vol.196 どうする?スタッフの勤怠管理
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report494.html
Vol.207 クリニックに再就職した場合にすべきことは?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report514.html
Vol.213 遠距離通勤のスタッフ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report542.html
Vol.215 オープニングスタッフについて
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report544.html
Vol.216 スタッフの居残り残業のリスク
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report551.html
Vol.219 スタッフ間の不協和音
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report556.html
Vol.222 伝え方の難しさ(聞き手に合わせた話し方)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本格的なコンサルティングの前に、専門家によるノウハウをWEB上で体験して頂けます。
無料版ではありますが、先生方の経営の意思決定に役立つ内容をご提供したいと考えています。個別相談にも対応していますので、登録のご検討を宜しくお願い致します。
【無料コンサルティングレポート】登録はこちらから
→ https://medical-takt.com/mail.html
【個別の経営相談に関する問い合わせ】
→ info@medical-takt.com
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本稿のバックナンバーは、メルマガ運営サイト「まぐまぐ」にも【トラブル発生!!クリニック事件簿】として掲載しています。
(運営会社)株式会社レゾリューション