Vol.323 休診中のクリニックの営業権評価

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2019.03.01

Vol.323 休診中のクリニックの営業権評価

クリニックの事業承継(M&A)を行う場合、営業権の評価根拠が重要なファクターとなってきます。評価を行うに際しては、『月間医業収入の数か月分』『年買法』『純資産価格』など尤もらしい評価方法があります。実務的には売り手と買い手のドクターが納得できる根拠を採用していきます。この様に、営業中の医療機関であればセオリー通りに算定できますが、休診中のクリニックの場合は、どの様に考えればよいでしょうか?『医業収入が発生しないから評価できない』と考えるのか、一定の経済的な評価をするのが妥当なのか検証してみましょう。

 

Aクリニックの院長は体調不良により診療日を縮小しています。借入金もあるため休診にする訳にもいかず、代診のドクターにお願いをしながら辛うじて営業している様な状態です。ところがいよいよ、代診ドクターも手当ができなくなり、診療所を休診にせざるを得ない状況になってしまいました。2か月間の休診期間の後、A院長は第三者にクリニックを営業譲渡することを決心しました。

 

A院長

「借入金やリースも残っているし、今後の生活のことを考えると少しでも高く売りたい。」

コンサルタント

「休診している間に、患者が他院に移ってしまっています。営業権の評価は難しいですね。」

 

A院長が診療を再開すれば、以前の患者は戻ってくるでしょうが、別のドクターが引き継いだ場合は話が別です。一から新規開業するのと同じ状況であると考えるのが妥当でしょう。

ところが、Aクリニックは1000万円の営業権を設定して営業譲渡することができました。これは場所に対する権利という考え方に基づきます。一般的な営業権は、患者数(収益)を経済価値に評価します。そう考えるとAクリニックの場合は評価ゼロです。しかし『開業場所』の評価となると別の見方ができます。近隣にクリニックを開業する物件がないのです。実は、再開発地域に入っており、新規の不動産開発ができないのです。既存不動産のリニューアルに関しては問題がないため、継続して利用が可能です。たまたま、このエリアで開業を希望している先生が、情報を聞きつけて事業承継を申し出てきたのです。売り手と買い手の思惑が合致したレアなケースではありますが、『営業権評価』の一つの考え方の提起であると言えます。

 

(まとめ)

Aクリニックは年間で1億を超える医業収入がありました。休診により他院へ移ってはいるものの、マーケットとしては収益が見込める物件であると考えたのです。目に見える数字だけで価値は図ることができません。そのクリニックを継承(M&A)しようと考える場合、あらゆる可能性を検討してみましょう。意外な価値を発見できるかもしれません。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

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