Vol.342 クリニックの購入を辞めた理由

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2019.03.29

Vol.342 クリニックの購入を辞めた理由

クリニックの事業譲渡を行う理由はそれぞれです。70歳を過ぎ勇退を考えた場合、クリニックの経営を辞め、勤務医として働くことを決めた場合、経営不振による閉院などです。この様に、弊社には、様々な理由によりクリニックの営業譲渡(M&A)を希望される先生からのご依頼が尽きません。営業権の計算根拠の基となる患者数が、ピークを過ぎているクリニックが殆どですが、年間の医業収入が1億円を超える優良経営クリニックの案件が入ってくることがあります。一見、経営内容から考えると飛びつきたくなる様な案件なのですが、注意しなければならないことがあります。本稿では、クリニックの事業承継(M&A)で注意すべきポイントの1つとてご紹介したいと思います。

 

A整形外科の院長(60歳)は、田舎に残した高齢の父親の介護のため、20年経営してきたクリニックを営業譲渡することに決めました。毎日の来院患者は150名を超えており、年間医業収入は2億円近くあります。

 

会計事務所スタッフ

「医業収入2億円で、役員報酬を含めた医療法人の付加価値が7000万円あります。営業権としては7000万円が妥当だと思います。」

A院長

「引き継いでくれる先生がいたら、いくらでもいいよ。」

 

A院長は愛着のあるクリニックと患者を引き継いでもらえさえすれば、お金のことに関してはあまり興味がないという感じです。直ぐに購入希望のドクターが現れ、早速交渉に入ることになります。診療行為データからクリニックの特性を分析していくことから始めました。

『150人の患者のうち、100人は診察のための受診。リハビリだけの患者は50人』であることがわかります。整形外科のクリニックの場合、一般的にはリハビリ患者の割合は60%~70%を占めます。医師が診察する患者は30%程度です。受診のために来院するというよりは、マッサージのために来院してきます。そうするとリハビリ器機とPTもしくはマッサージ師が患者のインターフェイスとなりますので、院長の存在感は薄くなっています。クリニックを事業承継(M&A)する場合、院長のパーソナリティの薄さは"継承のしやすさ"に繋がりますので、営業権の評価もしやすくなります。しかしAクリニックの様に、院長の診察とパーソナリティで集患しているクリニックの場合、継承したドクターが患者を繋ぎ止めることは極めて難しく、営業権の価値も低くなってしまいます。

 

(まとめ)

クリニックの評価としては"優良経営クリニック"と言えますが、B先生にとっては継承することが難しいクリニックと判断されました。今回のマッチングは不首尾に終わりましたが、幸い別のドクターが20%値引の譲渡価額でクリニックを譲り受けることとました。A先生としては譲渡価額に拘りはなく、クリニックを継続して引き継いでくれるC先生に快くバトンタッチをし、本件は無事に事業承継を完了することができました。

 

 

代表コンサルタント  柳  尚信

 

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成功ノウハウを真似るのは難しいですが、失敗のリスクを予見し、軽減することでクリニック経営を安定させることができます。本稿では思いがけないトラブルが連発しますが、「他山の石」として実際の経営に活かしてください。

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