Vol.344　引継ぎ時の繰越欠損の是非 |クリニック奮闘記|メディカルタクト

2019.04.02

Vol.344　引継ぎ時の繰越欠損の是非

医療法人を事業承継（M&A）する場合、前理事長の退職金が支給されるため、赤字の状態で事業譲渡されることがあります。この赤字は、引き継ぐ側にとっては、5年間に渡って利益と通算することができるため、欠損金がゼロになるまでの利益は相殺され納税を免れることになります。従って、税効果を考慮すると医療法人の買収資金も圧縮されることになります。しかしながらマイナス面がない訳ではありません。本稿では、繰越欠損金のある医療法人の買収について解説していきたいと思います。

毎期、継続して3000万円の経常利益を計上。譲渡時に役員退職金とし

て1億円を支給することにより、純資産額がマイナスになった医療法人の場合

最も一般的な営業譲渡のパターンです。患者の引継ぎも行われ、経営基盤をそのまま引き継ぐことができていれば、役員退職金支給による欠損金は問題になることはありません。今後も3000万円の経常利益が見込まれるため、金融機関の評価も問題ないでしょう。

２．休眠中で5000万円の欠損が残っている医療法人の場合。

医療法人格として営業譲渡する場合が該当します。医療機関としての営業実態がありませんで、再開する場合は行政との打合せを行う様にしましょう。その際に"欠損金の補填"が問題になります。医療法人は行政による認可事業です。公共性があり事業の永続性を求められていますので、原則としては"黒字経営"が要求されます。従って債務超過の状態を放置することは許されるはずもなく、資金の補填、若しくは"黒字化"のための事業計画が必要となります。そして忘れてはならないのが金融機関です。事業再開に伴って、銀行融資を受けようとするならば、赤字企業であっては論外ということになります。（返済の原資がないため、融資しても回収できないと判断されます）

再開に際しては、黒字化のための事業計画策定が必須であることを繰り返し述べておきます。

（まとめ）

繰越欠損金は事業を引き継ぐ側から考えると、大きなメリットであると考えられます。しかし、それは継続して利益が出ることが前提です。医療機関を買収する場合で一番考えないといけないことは、"第二創業期"であり、"起業する"ことと同じであるという認識に立つことです。"モノの売買"ではなく、『いきもの』である"経営を売買"するのです。クリニックの経営は簡単なことではありません。

代表コンサルタント　　柳　　尚信

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