2018.06.13
Vol.157 これ、私の仕事じゃないから!
組織が大きくなってくると、業務分掌のために部門が細分化されて、より専門的に処理されていくようになります。これにより業務の処理能力は向上していきますが、弊害としてセクショナリズムの発生があります。自部門の業務効率や利益を優先するために、他部門に無関心や非協力的な態度を取る様になります。ことことは大病院の様な大きな組織だけの問題ではなく、クリニックでも起こり得ることなのです。本稿では、普通のクリニックの日常業務に見るセクショナリズムにフォーカスしてみたいと思います。
Aクリニックは規模こそ大きくはありませんが、徹底した業務分掌により経営の効率化を推進しています。細かな職務規定をもってスタッフの業務範囲を明確にし、人事評価にも結ぶ付けています。そのため各人が行う課題(目標)も明確で、モチベーションも高い様に見受けられます。ある日、受付スタッフとクラーク(秘書課)との間でこんなやり取りがありました。
受付 「薬局から薬の疑義照会がきているので、対応してください。」
クラーク「え、どういう内容でしょうか?」
受付 「それは私の仕事じゃないから、秘書課で対応してくれる?」
クラーク「・・・・・」
業務分掌規程の中には、薬の疑義照会は誰がするとは明記されていません。受付スタッフは自分たちの仕事は、窓口での患者対応であって、外部の取引業者の対応ではないと考えている様です。ところが薬局とのファーストコンタクトは受付が行いますし、処方箋の説明も受付で行います。内容に関して知識が無い訳でもないのですが、患者対応の多忙さを理由に丸投げしてきたのです。院長は行き過ぎた業務分掌によるセクショナリズムの発生を改善すべく、事務系スタッフのローテーションを検討し始めました。業務の専門性を追求することにより、他部門への関心が薄くなったのが原因だと考えたのです。受付とクラークを一つの部門と考え、スタッフ各々がそれぞれの業務をローテーションすることでお互いの業務に関心を持たせ様としたのです。その結果、セクショナリズムは改善に向かっていきましたが、副産物として、全ての業務を誰もができる様になったため、バックアップ体制もより強力になったのです。事業所の規模の大小は関係ありません。周囲に気を配り、自分自身の業務範囲を限定せず、クリニック全体として「どうすべきか!」を考えて行動することが求められるのです。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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