Vol.381 売却価格に納得がいかない!

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2019.05.31

Vol.381 売却価格に納得がいかない!

クリニックのM&A(事業承継)する場合に、絶対的な評価額というものは存在しません。基準となる考え方を参考に、金額を上乗せしていく形になります。買手の候補が現れれば、金額を始めとした条件交渉がスタートするのですが、カタチのないクリニックの売却希望価格を巡っては双方の意見が対立するところです。本稿では、売手の希望価格とコンサルタントが評価した金額のギャップについてのお話しです。

 

Aクリニックの院長は75歳を迎え、クリニックを現在勤務中のB先生に営業譲渡することにしました。B先生は、自分を"ひいき"にしてくれる患者が多いことを実感しており、クリニックを継承することについて、前向きに検討していこうと考えています。B先生は知り合いのコンサルタントに営業譲渡の相場を聞いてみました。クリニックの規模(収入規模)から考えると3000万円位が妥当ではないか、という返答がありました。

B先生は運転資金を含めて5000万円の融資を銀行から取り付け、A先生との話し合いに応じることになりました。

 

A先生「このクリニックは1億円で、B先生に譲ろうと思うのだけど如何かな?」

B先生「え!クリニックの規模から考えると、かなり高いのではないですか!」

 

A先生は100人程度の来院患者があるこのクリニックであれば、1億円の価値があると考えています。果たして、B先生は1億円でこのクリニックを購入するべきなのでしょうか?

第三者的にクリニックを評価すると、MAX4000万円が譲渡金額としては妥当である様です。

仮にB先生が1億円で購入するとした場合、運転資金等の資金も必要であるため、1億2千万円は必要になります。Aクリニックは、年間1億円の医業収入がありますので銀行返済をしてもB先生の手元には2000万円程のお金が残ります。しかし現実的に銀行からの融資はい込むことができませんので、結果的にB先生は購入を諦めました。A先生は1億円の価値があると考えているクリニックを、そのままの値段で売却依頼を出しています。複数のドクターと交渉するも、売却希望金額を伝えたところで交渉が前に進みません。結局、売値を下げることになり、最終的には3500万円で営業譲渡することになりました。A先生も、何人かのドクターとのやり取りの中で相場観が理解できた様です。

 

(その後の経過)

B先生はAクリニックから遠くない場所で、別のテナント物件で開業しました。幸いA院長からは開業についての制約を受けていなかったので、近隣で自由に開業することができたのです。少し時間はかかりましたが、かつてのAクリニックの患者も来院してくれる様になり経営は順調の様です。

一方、Aクリニックを譲り受けたC先生は、患者をBクリニックに取られることとなったため、営業権として支払った3500万円は高い買い物になってしまいましたが、循環器が専門のC先生は、内分泌が専門のB先生とは診診連携することで相乗効果が得られています。

A先生は金額に納得はしていなかったものの、取引きが無事に済んだことにホッとした様です。

 

(まとめ)

今回の事例では3者の落しどころが見出されました。最悪の場合、Aクリニックは売却できずに閉院することになっていたかもしれません。営業譲渡を希望される先生は、ある程度の相場感を持って取引に臨んで頂きたいとのが率直な意見です。考えるべきことの視点は、"クリニックの営業権の第三者評価""買い手ドクターの資金調達力"の2点です。交渉事なので、ご自身の意見が100%通らないことも念頭に置く必要があります。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

 

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