Vol.369 試用期間中のスタッフを解雇

せっかく採用したスタッフなのですが、いざ業務をさせてみると"期待に及ばなかった"という経験のある先生は少なくないのではないでしょうか。しかしながら"正当な理由"がなければ解雇することはできません。最低限、就業規則には解雇事由を明記しておかなければなりませんが、そこに至るプロセスを経なければクリニックとしての"正当性"を主張することができません。あるクリニックの事例をもとに検証してみたいと思います。

 

Aクリニックでは、受付スタッフの退職に伴い欠員がでたため、スタッフを急募することになりました。数人の応募者の面接を行い、その中から業界未経験者の１名を採用しました。

採用の決め手は"人柄の良さ"です。仕事を覚えてもらうために早速勤務についてもらうことに・・・。教育指導はベテランスタッフに任せることにしました。パソコン操作が不慣れであることもあり、入職直後は全く余裕がない状態です。未経験者でもありますので、暫く様子を見ながらゆっくり指導しようということでしたが、なかなか練度が上がっていきません。しびれを切らしたベテランスタッフは、A院長に相談しました。

 

スタッフ

「新しいスタッフなんですが・・・、パソコン操作に夢中で患者を放ったらかしなんです。それ以外にも、大声で患者の名前を読んだり、病気のことを話したり・・・・。全く配慮に欠けてるんです。」

院長

「私も時々、気にしながら見てるんだが、困ったもんだね。一度、本人と話してみることにするよ。」

 

こうしてA院長は個人面談を行いました。仕事ができていないことは本人も自覚しており、申し訳ない気持ちで一杯の様です。最終的にA院長は、このスタッフに対して退職勧奨することにしました。『適性がない』ということが最大の理由です。結果から見ればコンプライアンスに抵触する対応かもしれませんが、患者サービスの観点から考えた場合に、仕事のできないスタッフを受付に座らせておくことができないと判断したのです。

・電子カルテの画面に集中し、目の前に患者がいても気が付かない

・待合室で具合の悪くなった患者に気付かない

・患者の病状について、周囲の人に聞こえる声で話す

以上の様な状況について、A院長は医療者として取るべき行動を説明し、このスタッフの理解を求める様に務めました。但し、今月末まではシフトが決まっているため、それまでは継続して勤務してもらう様にします。この時、A院長は次の様に話しました。

 

A院長

「これまでできなかったことのうち、1つでもいいのでできる様に頑張ってみませんか！短かったかもしれませんが、このクリニックで働いたことが、経験値になる様に頑張ってみて下さい。」

 

メディカルタクト　代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

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