Clinic Diary
クリニック奮闘記
Clinic Diary
クリニック奮闘記
看護部門を一人の看護師長に任せきりにした結果、スタッフが報告をためらい、トラブルが隠されるようになったクリニックの事例です。権限の集中を防ぐ組織づくりの方法を解説します。
クリニックも一定の規模になると、院長一人ですべてをまとめることはできなくなります。看護、事務、リハビリと部門ごとに責任者を置くのは自然な流れです。ただし、任せ方を誤ると、思わぬ問題が起きます。
A内科クリニックは、外来に加えて訪問診療を行い、訪問看護ステーションとケアプランセンターも併設しています。看護部門は、ベテランのB看護師長が、外来・訪問診療・訪問看護のスタッフ約20人をまとめていました。
A院長は看護部門をBさんに一任していました。その結果、看護部門のルールはBさんの基準で決まるようになり、院長が口を挟む余地はなくなっていきます。スタッフは、看護師長の顔色を見ながら働くようになりました。
ある日、訪問看護の利用者の家族からクレームが入ります。体調の不良を訴えたのに、看護師が対応せずに帰ってしまったというものです。担当の看護師は、対応が必要だと感じていました。それでも動けなかったのは、訪問時間が延びて後のスケジュールが崩れると、看護師長から厳しく追及されるためでした。
この件をきっかけに、小さなトラブルやヒヤリハットまで報告されずに隠されていたことが、あるスタッフの申し出で明らかになりました。
問題は、看護師長個人の性格ではありません。責任と権限が一人に集中し、院長との間に情報の通り道がなくなっていたことです。こうなると、現場の悪い情報ほど院長に届かなくなります。
A院長は、Bさんを院長付きの立場とし、院長の近くで仕事を支えてもらう形に変えました。看護スタッフは3〜4人の小グループに分け、それぞれにリーダーを置いています。情報は、リーダーが集まる会議で共有し、現場に戻す仕組みにしました。
小グループによる合議は、時間がかかる面もあります。それでも、責任と権限が分散され、スタッフの声が院長に届きやすくなりました。
部門の責任者を置くときは、任せる範囲と、院長に必ず報告することを最初に決めておいてください。そのうえで、責任者を通さずに院長と現場が話せる場を、定期的に設けることが有効です。
部門長に任せることと、任せきりにすることは違います。一人に権限が集中した組織では、トラブルは見えないところで大きくなります。クリニックの規模や風土に合わせて、責任と権限の分け方を見直してください。
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監修:柳 尚信(株式会社メディカルタクト 代表取締役)
会計事務所系コンサルティング会社で医療機関の経営支援に携わり、レセプト請求代行の取引実績は600件超。地区医師会や製薬会社でのセミナー講師、日経メディカルオンラインでのコラム連載『開業の落とし穴』『診療所駆け込み寺』を務める。著書『クリニック経営はレセプトが9割』(2021年、幻冬舎)。
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