Vol.201　業務の標準化　～やりすぎの仕事の弊害～

仕事のできるスタッフは、どこの職場でも重宝されます。教育する手間も省けますし何よりも任せて安心できます。スタッフの能力が高いことはいいことなのですが、時には弊害を生むことがあります。問題となるのは、業務水準が仕事のできるスタッフに合わせてしまって、その人の仕事を他の人に代われなくなることがある場合です。本稿では、能力の高いスタッフの『やりすぎの仕事』の実態について迫りたいと思います。

 

Aクリニックの事務スタッフは、5人のパートスタッフと、1名の常勤スタッフで構成されています。常勤スタッフはクリニックの中では若手の方で、知識レベルだけでなく、全ての仕事をテキパキと卒なくこなす敏腕ぶりで、院長の信任も絶大です。今日の受付担当は、常勤スタッフと、パートスタッフ2人の3人体制でスタートです。このクリニックでは、診察室への患者の呼び込みはスタッフが行います。診察室の院長の状況を見てタイミングよく呼び込むのは、スタッフの腕の見せ所になっている様ですが、これがなかなか難しいのです。院長に気を遣いながら、モタモタと呼び込むスタッフとは違い、常勤スタッフは絶妙なタイミングで呼び込みを行います。こうなると、他のスタッフの出る幕がなくなってしまいます。常勤スタッフも、いつしか、呼び込みは自分の仕事だという認識になってしまっています。

 

受付スタッフの業務のうちで、重要なものの一つに、再診患者のカルテチェックがあります。診察前にカルテを開けて、事前検査の有無の確認、定期検査項目の入力、血液検査データの確認、Do処方内容の確認等を行います。再診受付から診察に入るまでのアイドルタイムで行うため、比較的タイトな時間の中で行っていきます。従って、ここでも常勤スタッフの独壇場となってしまっています。結局のところ、パートスタッフの業務としては初診患者の登録と会計処理を中心に、月初のレセプトを行うという流れになっていきました。問題になったのは、中核業務を担っている常勤スタッフの退職が決まったときです。患者の呼び込み、事前カルテの内容確認等の作業を、不慣れなスタッフが行わなければならなくなりました。しかも細かく仕事をしてきているため、全てを引き継ぐことが極めて困難なのです。

 

（まとめ）

院長は、これまで業務の質は高くても他の人に任せられない様な仕事を改め、業務のボリュームを落とすと共に、誰もができるできる水準に戻すことにしました。呼び込みは廃止し、診察室に呼び出しマイクを設置しました。これによって、院長のタイミングで呼び出すことができる様にもなり、スタッフも業務から解放されます。事前カルテのチェック作業も廃止。処方や検査内容等に修正が生じた場合、事務スタッフが行っていましたが、診察室内で院長も再度確認を行っていたため二重業務となっていました。最終的に院長が確認するのであれば事務スタッフがする必要はないということになりました。

業務の質を担保しようとするあまり、仕事のボリュームが大きくなってしまうことはよくあります。業務の標準化を冠がる場合は、必要最低限の業務に限定してルール化する様にしましょう。それでも徐々に肥大化していく傾向にありますので、時々、外部からチェックする目線も持っていた方がよいでしょう。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

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