2018.07.18
Vol.182 数字は共通言語
コミュニケーションギャップについては、本稿でも度々お話しさせて頂きました。人同じ事象であっても、人によって伝え方は異なり、また受け手の側も理解の仕方は人それぞれです。
こうしたギャップを少なくするために、ビジネスの世界では数字で表現することが求められています。できるだけ抽象的な表現を避け、数字で表現することで端的に確実に相手に伝えることができます。本稿では、クリニックの院長が経営について顧問税理士と話してる内容をご紹介したいと思います。どれだけ具体的に相手に伝わっているかがポイントになります。
医療法人Aクリニックは決算を終えたところで、新しい会計年度に向けての経営方針等について、理事長と顧問税理士がミーティングを行っています。
税理士「今期も5期連続の増収増益で、医療法人の内部留保も随分増えてきました。」
理事長 「クリニック経営を事業と考えて、もっと大きくしていきたいですね。」
税理士「では来期の事業計画を一緒に作っていきましょう。まずは売上計画から・・・。」
こうして売上計画の作成に取り掛かりましたが一向にはかどりません。
税理士「5年間の売上推移から15%増の計画でつくってみました。」
理事長「検査技師の採用ができたので、エコーの稼働率を上げていきたいんです。技師さんの給料を考えると、これくらいはやってもらいたいところですね。」
税理士「では、この計画で頑張っていきましょう。」
こうして医業収入15%増の事業計画がスタートしました。
理事長 「心エコーのオーダーもどんどん出していくので、頑張っていきましょう」
検査技師「頑張ります!!」
それから理事長は今まで以上に積極的にエコーのオーダーを出す様になりました。ところが、検査技師の方がこなしきれず悲鳴を上げてしまったのです。
検査技師「理事長、検査のオーダーをこなしきれません。何とかしてください。」
理事長 「オーダーの出し方を少し考える様にするよ。」
(まとめ)
事業計画の様に包括的な話をする場合、具体的な行動計画にまで落とし込んでいくことが重要です。本稿のテーマである「コミュニケーションギャップ」が発生原因は、売上15%増の具体的な方策について曖昧だったことにあります。
医師である理事長も顧問税理士も、15%増について「何となく」「感覚的に」頑張ろうと考えているにすぎず、二人のイメージは違っていたかもしれません。エコーの稼働率を上げようと考えている理事長は、毎月の件数目標→一日の件数目標を設定し、検査技師と目標を共有化しておく必要があります。更に、来院患者の属性を考慮し、心エコー、腹部エコー、下肢エコーのオーダーの先読みすることで、初めて数値管理が可能になるのです。事例の様に関係者が「感覚」で頑張るのではなく、「数字」に置き換えて情報共有すれば、目標がぶれることもありませんし、問題が生じた時の軌道修正も容易に行うことができるはずです。
言葉でなく、数字で会話することは時には「厳しさ」を追求することにもなりますが、参考にしてみて下さい。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
◆クリニック経営 関連のバックナンバー◆
Vol.3ウチのクリニックの経営は大丈夫(3ケ月遅れの試算表では遅すぎる意思決定)
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report15.html
Vol.13事業計画って絵餅じゃないの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report47.html
Vol.14医療機器の導入はリースがいいの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report48.html
Vol.16クリニックで黒字倒産の危機
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report50.html
Vol.17経営理念は必要か?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report51.html
Vol.18どうする差別化戦略?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report52.html
Vol.19分院経営は難しい
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report55.html
Vol.20頑張れ!って言うけど、何をどう頑張るの?
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report56.html
Vol.22施設との関わり方
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report60.html
Vol.26物品管理と棚卸
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report68.html
Vl.28インフルエンザの予約方法
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report75.html
Vol.37院長はプレイングマネージャー なんでもしなけりゃ
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report94.html
Vol.38節税目的で購入した器機の末路
https://medical-takt.com/backnumber/2017/report96.html
Vol.51患者が来ないから、アルバイトに行こう
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report128.html
Vol.55クリニックの社会的信用は何ではかる?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report137.html
Vol.58毎日がマンネリ。開業医の日常に辟易
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report140.html
Vol.60住宅ローンがあると開業できない?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report155.html
Vol.61査定を受けたレセプトの対処
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report156.html
Vol.63家族は他のクリニックの患者
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report158.html
Vol.64繰り上げ返済してもいいですか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report160.html
Vol.66まとめ買いは本当に得しているのか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report203.html
Vol.68お金が貯まるシステムの作り方
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report205.html
Vol.69在宅診療のススメ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report206.html
Vol.70医療法人化を考えるとき
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report208.html
Vol.72院長へ報告するということ
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report210.html
Vol.74看板方式で在庫管理
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report212.html
Vol.75「言いましたよ」は伝わっていないかも?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report219.html
Vol.76業務の効率化はしたけれど
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report220.html
Vl.94自由診療の値決め
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report258.html
Vol.101 久しぶりの来院「変わりありませんか?」
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report277.html
Vol.105 代診ドクターの診療日
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report286.html
Vol.107 仕組みで運営するクリニック
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report288.html
Vol.108 どうする?未収金回収
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report289.html
Vol.110 事務部門のアウトソーシング
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report299.html
Vol.113 開業医は儲けすぎ?① ~診療科目別利益率~
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report302.html
Vol.114 開業医は儲けすぎ?② ~所得に対する勤務医と開業医の考え方~
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report303.html
Vol.126 診療受付時間は何時までがいいのか
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report332.html
Vol.127 待ち時間が発生する原因はどこか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report333.html
Vol.128 予約システムに負けないアナログ対応!
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report334.html
Vol.135 お金の貯まる現金管理
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report354.html
Vol.138 朝礼で何を伝えるか
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report357.html
Vol.140 赤字訪問看護ステーションの挑戦
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report364.html
Vol.141 処方日数の分散と患者管理(待ち時間の解消)
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report365.html
Vol.147 医療法人と理事長報酬を考える
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report378.html
Vol.152 基金拠出型医療法人の事業承継と相続対策
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report395.html
Vol.153 キャリアアップ助成金の活用
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report396.html
Vol.154 誰のための投資なのか? 非常勤医師が使う機器の採算性を考える
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report390.html
Vol.157 これ、私の仕事じゃないから!
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report402.html
Vol.160 歯科医院の経営破綻にみる将来像
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report411.html
Vol.162 コンサルタントさん! 何ができるの? ~ 経営改善編 ~
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report413.html
Vol.164 クリニックの診療方針とアルバイト医師
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report419.html
Vol.168 物件オーナーと店子の関係~オーナーが医師の医療モール
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report426.html
Vol.170 他院との医療連携~得意分野を伝えること~
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report434.html
Vol.173 医療法人にして本当に良かったのか?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report437.html
Vol.176 地主が医療ビル(クリックビル)を持ちたがる理由は?
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report446.html
Vol.178 テナントの共用部分の取り扱い
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report448.html
Vol.179 クレーマーの対処方法
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report449.html
Vol.180 掃除の効能
https://medical-takt.com/backnumber/2018/report457.html
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本格的なコンサルティングの前に、専門家によるノウハウをWEB上で体験して頂けます。
無料版ではありますが、先生方の経営の意思決定に役立つ内容をご提供したいと考えています。
個別相談にも対応していますので、登録のご検討を宜しくお願い致します。
【無料コンサルティングレポート】登録はこちらから
→ https://medical-takt.com/mail.html
【個別の経営相談に関する問い合わせ】
→ info@medical-takt.com
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
本稿のバックナンバーは、メルマガ運営サイト「まぐまぐ」にも【トラブル発生!!クリニック事件簿】として掲載しています。
(運営会社)株式会社レゾリューション