Vol.188 訪問看護ステーションの経営モデル

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クリニック奮闘記

2018.07.26

クリニック奮闘記

Vol.188 訪問看護ステーションの経営モデル

地域医療の担い手として、訪問看護ステーションの存在意義は大きのですが、その事業所の経営は決して簡単ではないことはお話しさせて頂きました。

Vol.140 赤字訪問看護ステーションの挑戦https://medical-takt.com/backnumber/2018/report364.html

病院や診療所の附属設備として運営されている事業所も多いため、赤字部分は本体で吸収されており経営改善に繋がりにくいという背景もあります。本稿ではオランダの地域包括ケアシステム"ビュートゾルフ"に学んでみたいと思います。

 

A訪問看護ステーションはクリニックの在宅部門の一翼を担う、5人の訪問看護師で編成されています。基本的には自院の在宅患者を中心にフォローしていることもあり、事業所としては赤字体質を引きずっています。ある日、A院長は在宅専門医の採用に際して、在宅患者の新規獲得と訪問看護ステーションの経営改善に取り掛かることを宣言しました。

 

A院長  「在宅診療部門はB先生が責任者となって運営していきますが、同時にステーシ

ョンの黒字化も行いたいと思います。」

訪問看護師「先生、私たちもサボっているわけではないんですが、どうすれば黒字化できるんでしょうか?」

A院長  「オランダの地域包括ケアシステムで"ビュートゾルフ"というのがあるんだよ。僕も勉強中なんだけど、これを参考に一緒にやってみないか?」

訪問看護師「よくわかりませんが、面白そうですね。先生、宜しくお願いします。」

 

訪問看護ステーションの黒字化するためには、看護師の稼働時間を増やすしかありません。

1人当たりの稼働時間には限界がありますので、スタッフ数を増やしていき事業所の規模を

拡大していかなければならないという結論に至ります。ところが、この"ビュートゾルフ"

の考え方は寧ろ逆で、少人数で質の高いサービスを追求していこうとするものです。訪問看

護ステーションのビジネスモデルから考えると、少人数組織は成立しない様に思われます

が、現場の効率化を優先するという考え方を持っているのです。具体的なシステムは次の通

りです。

・フラットはチーム体制(管理者は置くが、現場の訪問看護師に階級差はない)

→現場では一人で判断し、自己完結できるだけのスキルと責任が求められるが、看護師とし

ての全ての権限は現場に与えられている。

・1チームは5人を上限とし、利用者の増加に対してはチームを増やしていくことで対応

→チームごとに全体管理を行う管理者(マネージャー)を設置するが、現場とは切り離して

考えること。

・チームで最大50人の利用者をマネージャーが管理することで、ケアの質を落とさない様

にする

 

(まとめ)

A院長は、まず現状の5人のスタッフの稼働率が一定になる様に、利用者の割り振りを行い

ました。利用者の状態に応じて担当にする場合と、チームでケアする場合に分類し全体最適

を考える様にしています。半年経過後、若干の利益を計上することができる様になり、第一

段階はクリアーされました。次のステップはいよいよ2チーム目の編成です。現在のチーム

の中から次のリーダーを選出し、同じ様にマネジメントを行います。この場合、全てを任せ

きりにするのではなく、軌道に乗るまでの間は、全体のマネジメントをA院長が行う様にし

ています。今では3チームの編成がなされおり、延べ150人の在宅患者をフォローすること

ができる様になっています。もちろん黒字化しています。

 

メディカルタクト 代表コンサルタント  柳  尚信

 

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