2018.09.04
Vol.214 スタッフへの情報開示はどこまでする?
スタッフがモチベーションを維持しながら、同じ方向を向いてクリニックを運営するために、経営数
値の開示を行うことがあります。経営者である院長は当然、理解しているのですが、スタッフに経営の考え方を伝えるには、一工夫しなければならないでしょう。民間企業の営業社員に言うのと同じ様に、ノルマのごとく数字の話をするのはナンセンスです。仕事に対する価値観(考え方)、クリニックにおける立場なども考慮した上で伝え方を考えなければなりません。本稿では、スタッフにもクリニックの経営に関心を持ってもらおうと考えた院長の、スタッフミーティングの様子を見てみることにしましょう。
Aクリニックでは毎月1回、院長とスタッフ全員で院内ミーティングを行っています。内容は、業務報告や業務改善についての提案や、議事の進捗状況の確認を中心に行っています。院内の風通しをよくするという意味にいては、このミーティングはスタッフにも好評で、日頃は、院長との接点があまりない事務スタッフも積極的に発言しています。そんな会議の中で院長から発議がありました。
A院長「これから会議の趣向を少し変えたいと思う。皆さんにもクリニックの経営に関心を持ってもらいたいので、これからは毎月の収支報告をしたいと思います。」
こうして、クリニックの事業収支の報告を会議ですることになってのですが、顧問税理士から意見がありました。
税理士「院長、事業収支をスタッフに見せるのは問題ありませんか?」
A院長「どんな問題があるのか、教えてもらえないだろうか?」
税理士「スタッフの給料がわかってしまいます。他にも借入金の返済額も・・・・収入だけの報告で良いのではないでしょうか?」
A院長「スタッフはレセプトを見ているので、クリニックの収入がどれくらいかは知っているよ。全体感を知ってもらうためにも、経費の部分も開示したいんだよ。もちろん人件費は分からない様にするけどね。」
こうして院長は、次の会議に備えて、会計事務所で作成された月次損益計算書をベースに資料を作り始めました。収入はそのままに、経費は細かくは表示せずに主要科目以外はそのた経費に全て包含しています。
(まとめ)
スタッフミーティングで経営資料を開示しているクリニックはありますが、方法については考えなければなりません。まず、外部に流出することを防ぐため、配布資料は作成しない様にする。スタッフの理解力や組織風土により、どのレベルまで開示するかは院長が判断しなければなりません。スタッフに経営参画意識を持たせるのは簡単なことではありませんが、院長自身が、メッセージとして「何を伝えたいのか!」を明確にしておくことが必要です。数字だけでなく、言葉(概念的)で伝える内容が重要ではないでしょうか。
メディカルタクト 代表コンサルタント 柳 尚信
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