Vol.266 扶養家族のアルバイト収入

年末調整の書類が税務署から送られてきています。その中に「扶養控除等異動申告書」があるのですが、これは、その事業所で働く全てのスタッフに提出して頂くものです。（例外的に掛け持ち勤務されている場合、対象から外れることがあります。）住所、氏名、マイナンバーの記載をはじめ、扶養控除の対象者（年収103万円以下）を記載して申告します。事業所としては、この申告書の内容に従って年末調整するのですが、申告内容については"あくまで自己申告"です。事後になって税務署から訂正を求められるケースがありますので、事例を交えてご紹介したいと思います。

 

Aクリニックに〇〇税務署から"お尋ね"が届きました。内容は昨年度の年末調整において、スタッフの扶養控除に間違いがあるのでは？という指摘です。対象となっているスタッフには大学生と高校生の子供がいます。どうやら大学生のアルバイト収入が収入オーバーしている様です。早速スタッフを呼んで、内容の確認を行います。

 

A院長

「税務署から"お尋ね"がきているんだけど。どうもお子さんのアルバイト収入が扶養控除の制限を超えているみたいだよ。」

スタッフ

「毎月、5万円程度のアルバイトなので、超えてるはずはないのですが・・。」

A院長

「事業所は１円でも給料を支給したら源泉徴収票を市区町村に提出するから、間違ってないと思うよ。最近はマイナンバーで全て確認できるので、他人と間違えることもないし。」

スタッフ

「いえ、103万円なんて、絶対超えるはずがないですよ！！」

 

こんなやりとりがあったのですが、院長に不満をぶつけても仕方ないのですが・・・。

 

（まとめ）

院長は次の様にスタッフに指示を出しました。

・市役所に行って"納税証明（所得証明）"を発行してもらうこと。

→そこには、1月～12月まで1年間の収入金額が記載されているので、103万円を超えているか否かは一目瞭然です。

・それでも不服なら、毎月の給料明細と銀行振込額を突き合わせて計算してみて下さい。貰っている金額と、納税証明の金額に差が生じているのであれば、事業所の処理ミスが考えられます

→その時は、そちらの事業所に訂正の手続きを依頼すること。

調査の結果、税務署の指摘が正しいことが判明しました。Aクリニックとしては"昨年度分の再年調"を行い、増差分を直ぐに納税しました。納税額が5万円程度あったため、個人の心理的負担を軽減するため、今年の年末調整まで待って、還付金と相殺することにしました。

 

この後、所得税の修正後に、市役所から市民税の追加納付が求められます。毎年のことで漫然と行われがちな年末調整ですが、うっかりすると、こんな落とし穴がありますので注意しないといけないですね。

 

メディカルタクト　代表コンサルタント　　柳　　尚信

 

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